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代表者のブログ

最近思った事、気がついた事

リスクマネージメントは最悪である&失敗をしないものは信ずるな (ドラッカー) 0

親しい会社の社長さんから今朝メールをいただきました。
以下の「ネットの書き込み、どこからがアウト」という日経のデジタル記事について知らせて下さるメールでした。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFP18003_Y2A610C1000000/

ツイーターやフェイスブックで個人が自由に情報を発信、受信できるようになったのですが、ちょっとしたつぶやきが思いもしないような事態を招く、という話です。
例えばゼンショーの従業員がツイーター上でノロウィルスに感染しているのに働かされている、という事をつぶやいて大問題になった、等の事が紹介されています。
要はこういったSNSの普及が経営上のリスクを生じさせている、という問題提起の記事でした。

そういう問題に対処しないといけないのは言うまでもないですが、それによってSNSの持っている可能性に目をつぶるのは愚の骨頂のように思いました。
そこで送って下さった社長さんには以下の内容のメールをお礼と共に返信しました。

「お知らせ有難うございます。
さっき航空会社とやり取りをしていました。旅行社のちょっとした配慮不足で自分の予約が確認できない事態になりました。そこには出張の手配を旅行社に頼んでいたのですが、その座席指定をしようと電話したら、名前で予約の確認が出来ず、予約番号などを求められました。聞いてなかったので、名前で検索できない理由を聞くと「個人情報の問題」でという事でした。つくづく不便な世の中になりました。

お知らせくださったSNSの件も同じような、リスク管理問題です。
確かにそういう事ありますし、用心せねばなりませんが、リスクを恐れて身動きが取れなくなることの方が恐ろしいです。
ドラッカーも「リスクマネージメントというものは最悪である」旨の発言(後述)をしています。具体的には「リスクを最小化しようという営みは最悪だ」と言っています。更に「経営とはリスクを取りに行くものだ」という事も言っています。

さしずめ、失敗を恐れ、真実から目をそむけ、糊塗し、現状維持を肯定するところに停滞と官僚化が進行する、という事です。
社長の送って下さった意図とは違うかもしれませんがそんなことを思いました。

大企業ほどそうですが、ガバナンスとかコンプライアンスとか一見それらしく見えて実際は中身のない概念に、がんじがらめになって死に体になっていくのです。
また挑戦意欲と創造性のない人にとってはそういうところが最高の逃げ場所、安住の地になっていきます。」

これは経営の話ですが、人生についても同じです。失敗を恐れるところに停滞が始まります。組織にとっても、個人にとっても失敗こそが成長の因子なのです。そのことをドラッカーはこのように書いています。

①あらゆる組織が、事なかれ主義の誘惑にさらされる。だが組織の健全さとは、高度の基準の要求である。目標管理が必要とされるのも、高度の基準が必要だからである。
成果とは何かを理解しなければならない。成果とは百発百中のことではない。百発百中は曲芸である。成果とは長期のものである。すなわち、まちがいや失敗をしない者を信用してはならないということである。それは、見せかけか、無難なこと、下がらないことにしか手をつけない者である。成果とは打率である。弱みがないことを評価してはならない。そのようなことでは、意欲を失わせ、士気を損なう。人は、優れているほど多くのまちがいをおかす。優れているほど新しいことを試みる。

「失敗をしないものを信用するな、人は優れているほど多くのまちがいを起こす。優れているほど新しいことを試みる」、初めてこれらの言葉に接した時、本当に勇気づけられました。

尚、以下にリスクマネージメントに関するドラッカーの言葉を貼り付けます。参考にしてもらえれば幸いです。

②経営科学がなぜ間違って使われているかを解くもう一つの鍵は、リスクに対する態度にある。経営科学は、その文献においても、企業活動への適用においても、最終目標としてリスクをなくすことや最小にすることに力を入れている。
企業活動からリスクをなくそうとしても無駄である。現在の資源を未来の期待に投入することには、必然的にリスクが伴う。まさに経済的な進歩とは、リスクを負う能力の増大であると定義できる。リスクをなくす試みはもちろんのこと、リスクを最小にする試みさえ、リスクを非合理的で避けるべきものとする考えが底にある。だがそのような試みは、最大のリスクすなわち硬直化のリスクを冒しているといわざるをえない。

③経営科学の主たる目的は、正しい種類のリスクを冒せるようにすることでなければならない。マネジメントのために、いかなるリスクがあり、それらのリスクを冒したとき何が起こりうるかを明らかにしなければならない。経営科学の文献に見られるリスクの最小化という言葉は、リスクを冒したり、リスクをつくりだすことを非難する響きがある。すなわち、企業という存在そのものに対する非難の響きがある。それは、ひと昔前のテクノクラートという言葉の響きを思い出させる。なぜなら、リスクの最小化という言葉は、企業を技能に従属させようとするものだからである。経済活動を、責任を伴う自由裁量の世界としてではなく、物理的に確定した世界と見なしている。これはまちがっているというより、最悪というべきである。

以上、本文が皆さんの挑戦的人生のスタートに役立てば幸いです。

ZAPPOS WHO?  ザッポスとは何者か 0

今、ロサンゼルスにいます。一昨日私がコーディネイトする研修ツアーでラスベガスでザッポス本社を訪問しました。2時間に満たない滞在でしたが、私もその前後に詳しく解説しましたので、今回の研修参加者の皆さんはザッポスに対して理解を深め、ザッポス体験をすることが出来たと思います。
ザッポスは今、最も勉強になる企業の一つです。
そこで知らない人もいるでしょうから少しザッポスについて解説しましょう。

ザッポスは10年程前に創業された靴のオンライン販売企業です。
ザッポスとして成功を収めた後、現在はアマゾンに買収されています。
でもザッポスの経営体制はほぼそのまま維持されています。トニーシェイを中心にした経営体制が素晴らしいからです。

そのトニーシェイ(台湾系アメリカ人)が創業者です。彼はフェイスブックのザッカーバークと同じくスタンフォードの出身で学生のころに起業したのも同じです。確か現在38,9歳だったと思います。

ザッポスの特徴はウェブサイトを見ればわかります。
http://www.zappos.com/

まずトップページから始まってどのページを開こうが左上の一番目立つところにカスタマーサービスの電話番号が乗っています。
普通のオンライン販売企業は電話番号にたどり着くのが大変なのは皆さんお分かりですね。最低5回はクリックしないといけないと言います。

要はオンライン販売企業は顧客と話したがっていないのです。お客とのやり取りをコスト、面倒、やっかいな事、と考えているのです。
だからどこのオンライン企業もコールセンターの担当者は短時間にどれだけ沢山のお客を処理したかが、問われるのです。即ちどれだけ早く電話を切るか、という事です。

ザッポスのお客との最長通話記録は昨年トニーシェイの「ザッポス伝説」を読んだ時に7時間とありましたが、現在は8時間超になっています。

ザッポスではコールセンターは「カスタマーロイヤルティーセンター」と呼ばれ、最も重視されている部門です。電話による注文は全売り上げの5%程度ですが、コールセンターに大変なコストをかけています。

何故なら、電話が唯一顧客との人間的なアナログでの接点だからです。そしてすべての顧客は一度は電話してくるものだ、という事をザッポスが理解しているからです。
その一回の顧客との接点を顧客との人間的つながりを深める、生涯のザッポスファンになってもらう機会として考えています。

ザッポスのミッションは「幸せを配達する」(Delivering Happiness)です。トニーシェイが去年のエイプリルフールに「ディズニーを訴えてやる」というジョークをツイターで飛ばした話が話題になりました。
ディズニーランドが「地上で一番幸せな場所」とキャッチフレーズにしているには問題がある、ザッポスこそそれにふさわしい場所だ、というのがその趣旨ですけれど、上記のザッポス伝説を読むとこれが冗談に思えない彼らのやっている事のすごさが判ります。
アップルはアイフォンでフェイスブックはSNSで世界を変えましたが、同様にザッポスも靴のオンライン販売で世界を変えている会社なのです。

以下簡単にザッポスの事を箇条書きで紹介しておきます。興味お持ちなら本を読んでみて下さい。

ザッポスとは何者か
① 返品の送料も無料、365日間OK。交換希望があれば交換する商品を先に発送する会社。
② カスタマーサービスでベストになりたかったからドロップシップ(メーカーによる直送)をやめ、何百万のアイテムを扱えるフルフィルメントセンター(物流センター)を作った会社。
③ コールセンターはカスタマーロイヤルティーチームと呼ばれCFOであれ、法務担当役員であれ全員がカスタマーロイヤルティーチームを体験する会社。しかも4週間。
④ ソーシャルネットワーク戦略の先駆企業、クチコミを最も有効なマーケティング手段とする会社。
⑤ コールセンターの最長通話記録が8時間を超える会社。
⑥ 顧客の信頼と愛を勝ち取り、サービスで「ワォ!」を提供する会社。
⑦ 楽しく仕事が出来て社員を家族のようにする会社。

ザッポス体験とは何か
以下ザッポスの社員が語るザッポス体験とはなにかというコメントを数例紹介します。
① ザッポス体験とは顧客と従業員に正しく対応する企業文化の事を言います。
② 他人の為に正しい事をやろうとするのがザッポス体験です。
③ 一言で言えば自由。そして人のために何かやろうという気持ちこれがザッポス体験。
④ ただ商品を売るんじゃないんです。私はここが小売業だとは思っていません。ザッポス体験とは世界を変えたいと思う事です。ビジネスの世界で人とどう接するかという事なんです。
⑤ 主人が障害を持っていて、ここ数年で家族を亡くしました。会社に行って楽しむことが人生の支えなんです。

ザッポスが最も大事にしている事
そんなザッポスが最も大事にしている2つの事があります。
① ザッポスの中核理念である10のコアバリュー
1.サービスを通じて,WOW(驚嘆)を届けよう。
2.変化を受け入れ,その原動力となろう。
3.楽しさと,ちょっと変わったことをクリエイトしよう。
4.間違いを恐れず,創造的で,オープン・マインドでいこう。
5.成長と学びを追求しよう。
6.コミュニケーションを通じて,オープンで正直な人間関係を構築しよう。
7.チーム・家族精神を育てよう。
8.限りあるところから,より大きな成果を生み出そう。
9.情熱と強い意思を持とう。
10.謙虚でいよう。

② そしてこれらのコアバリューを行動様式として組織と個人の生活に定着させる企業文化です。

ザッポスがすごい本質的な理由
ザッポスが素晴らしいのは上記のコアバリューと企業文化の確立、浸透を通じて、社員のやる気、創造性を存分に引き出している、という事です。
やる気と創造性を引き出す秘訣は「内発的動機付け」(楽しい、成長実感がある、世のため人のために役に立っている)を重視することですが、これを自然に実行しています。
ちょっと簡単に解説します。
① 給与は決して高くない、親会社のアマゾンより25%低い。低い分は福利厚生と企業文化の維持に使われる。
② また上位職になればなるほど世間より相対的に給与は安くなる。創業者のトニーシェイの報酬は年36,000ドルでしかない。
③ ザッポスで働くことは何より楽しい体験である。
④ 成長できる会社 チャレンジと失敗から学ぶことを奨励されている。
⑤ 世の中、人のために役に立つことが出来る。「幸せを届ける」がミッション、使命。
⑥ 裁量権が社員に委ねられている。
⑦ 仕事と人生の一致。コアバリューは会社の中でのみ大事なのではない。プライベートライフにおいても信条化している。

どうでしょう。
これからの企業経営の在り方の良いお手本がザッポスです。経営者、経営幹部は是非ザッポスの事を勉強し、そして一度訪問してください。
ザッポスの子会社の「ザッポスインサイト」という会社が、ザッポス流の経営を普及させるための一種のコンサルティン活動をやっています。
今回の訪問もそのインサイトのスタッフが我々を案内してくれましたが、「私の方がうまく説明できるのになー」と思うことがしばしばありました。
だからここの訪問は私のコーディネイトが必須です。行きたい人は私に声をかけて下さい(笑)。
ザッポスだけではないこれからの経営を深く考えさせられる企業を訪問し、学ぶツアーを企画します。今期はもう二度ほどいけたらいいと思っています。

ロサンゼルス トーランスにて

創造性とはなにか 0

前回の記事はフェイスブックにも転載しましたが、そこに友人がコメントをくれました。 彼女は「「経営とは詰まるところ“創造性”…今まではそう考えてはいけないんだと思っていました。飛び出さず抜きん出ず維持存続というのが正しい会社のあり方というか。・・・とても窮屈でしたが(笑)」と書いてきました。 コメントを返そうと思いましたが、皆さんにも共有する為にフェイスブックと合わせてここでも追記します。 創造性とは何かという事です。

一般に創造性とは何かを創造する、例えば芸術家のようなイメージ、また企業、事業を立ち上げる起業家のようなイメージを持ちますが、それは結果的な創造です。 しかし一つの事業を立ち上げ、成功まで導き、更にそれを維持発展していくためにはいくつもの要素が必要です。 そしてその要素の多く、もしくは重要な要素は「運」によってもたらされる、と言っていいでしょう。 成功とは結局「運」なのです。 だから前回の記事でも幸之助さんは3つの成功要素を上げて、①やろうとする事業が伸びている業種であること、②運がある事、③経営の才能=使命感があること、と「運」を3要素に入れられているのです。幸之助さんなら努力をいれそうなものですが、そうではなくて運なのです。

努力が不要とは言いません。ただ使命感があれば人間は当然努力するものです。また努力は成功のカギかと言うとそうではありません。楽々成功する人もいますからね。 セレンディピティーと言う言葉があります。知りたい人はネットで調べてほしいのですが、一種の幸運を引き寄せる能力を言います。 この言葉を初めて知ったのは、ブラジルのセムコ社の経営者のリカルド・セムラーの著作でです。セムラーは私が最も尊敬する経営者の一人で、彼ほど革新的な経営者はいないと思います。興味あれば以下を読んでみて下さい。

これからの企業がどうあるべきかの処方箋がここにあります。ちなみにセムラーの理想は「月曜の朝が待ち遠しい会社」です。 そういえばラスベガスのシーザースパレスのわきに「セレンディピティー」と言うレストランがありました。再来週ラスベガスに行くので、寄ってみましょう。運が付くかもしれません。 話が横道にそれましたが、セレンディピティーもユングの言うシンクロニシティーも同じような概念です。皆さんも思いもしなかった偶然の不思議に何度も出会っているでしょう。そういった偶然は何故起こるのでしょう。

結論的に言うならそれらは意識の創造によってもたらされるます。 既に物理学は「すべての現象は意識の存在を抜きにしては考えられない」という事を証明しています。そのあたりを勉強したい人は以下を読んでみて下さい。 意識の創造性と言いますが、これは実はおかしな言葉なのです。 意識というのは創造を営みにしている存在です。その意味で意識は創造そのものなのです。高い意識は高い現実を創造し、低い意識は低い現実を創造する、と言えば良いでしょうか。 それを理解するのは以前このブログに書いた以下の記事が参考になります。

 ブログ記事

ここで言いたかったことは、あり方が状況に反映される、という事です。状況を変えたければ先ず貴方自身の在り方を変えましょう、という事です。 そして、在り方をもう少し具体的に言えば「意識の在り方」と言えます。 意識の在り方をもう少し物理学的に説明すれば意識には波動が高い意識と低い意識があるという事です。波動が高い(周波数が高い)意識と言うのは使命感と情熱によって加速した、ワクワクした意識です。低い意識とは絶望、不安、迷い、無気力状態にある意識です。 だからたびたび引用しますが、以下のブログに書いた「ワクワクを追いかける」という事が大事だという事になるのです。

ブログ記事2

要は意識の高低、意識の周波数に相応しい現実が引き寄せられるのです。 こういうと「引き寄せの法則」「ザ・シークレット」などと同じ論調になりますが、これらには若干違和感があります。 引き寄せるというよりそういった現実を選択する、と言うほうが良いでしょう。 実際私たちは瞬間瞬間無数の現実の中から自分の周波数に相応しいチャネルを選び出してそれを体験しているというのが宇宙の実像のようです。量子力学や物理学がその観点が正しいことを証明しつつあります。 以下の映像はそのことを理解する一助になるでしょう。

バシャール動画

ここでは「創造の4つの法則」を上げています。 一つ目の法則 「自分は存在する」 二つ目の法則 「一つもののはすべてであり、すべてのものは一つである」 三つ目の法則 「与えるものは受け取るものである」 四つ目の法則 「変化だけが変わらないものである」(ただし上の3つの法則は除く) 創造にはこの4つの原則しかありません。お分かりになりますか? ここで我々に有益なのは2番目と3番目です。 2番目であるが故に3番目があるのです。 結局一つの意識しか宇宙にはありません。すべての意識は根源で一つに繋がっています。その片鱗をユングは普遍的無意識とか集合的無意識と呼んで表現しました。 一つの意識が無数の意識と其々の現実を作り上げているのが宇宙の実相です。

よく人間を神さまの分霊(わけみたま)、分身であるとするのはそういう意味です。 だから本質において私は貴方であり、貴方は私なのです。 私が貴方に与えたものは、私が私に与えたものです。だから私が受け取るのです。 た だこの3次元世界には空間と時間があります。(本当はそういうものはありません。3次元的現実の中でのみ存在します。時間や空間が3次元的幻想である事も量子力学は証明しつつあります)。 だから私が与えたものは確かに私が受け取るのですが、この世では一定の時間がかかります。すぐ受け取りません。 またつい私たちは「この人に上げたのだから、この人から見返りがくる」と思うのですが、それもそうはいきません。

すべては自分の分身ですから、どこから見返りがやってくるか判りません。しかし受け取るです。 時空を超えて我々が世界に押し出したものは必ず自分が受け取ります。 ついでにいうと2012年という年はその実現の速度が加速度的に早まる分岐点になります。だからドンドン創造性が高まる、いわば思いの実現速度は加速していきます。 話がまた脱線しましたので、元に戻します。 運に関してです。与えるものが受け取るものですから、良い運が欲しければ、人のためになる事をすればいいのです。

幸之助さんは自身の事業を聖なる事業=世のため人の為、人類を幸せにするための事業、であると位置づけ、それを最も重要な意思決定の基準としたのです。そのことが松下幸之助をして日本一の経営者たらしめたのです。 前に西田文朗さんの「他喜力」を紹介しました。 この本のサブタイトルには「他人を喜ばせると幸運が押し寄せる」とあります。 先ずは身の回りの家族、友人、更に多くの人を喜ばせるとますます幸運が大きくなります。西田さんは運の種類として「ツキ」「強運」「天運」の3つを上げています。 最上を天運として、天運を得るにはとにかく他人を喜ばせる、他人を幸せにする事が大切だと力説されています。このことは全く正しいです。

なぜ、そうなるかは私の上記の説明で判りますね。 量子力学とか、すべては一つの意識であるとか、ちょっと難しかったかもしれませんが、結論は簡単です。 今ちょうど再来週のアメリカ研修の現地で講話するコンテンツを作っているのですが、そこで解説しようと思っている優良企業の事例も全部同じです。 即ち「他者への奉仕、サービスを生き方にするとき人生も経営もうまくいく」という事です。そう言う考え方が自然と身についている企業や人は成功するようになっているのです。 この話、お役にたてば幸いです。

日本資本主義の精神 松下幸之助さんの経営 0

前回ソニー凋落の真因と言うテーマで以前書いた拙稿をこのブログに掲載しましたが、一言で言うとそれは経営の欧米化であり、言葉を変えれば日本的経営からの逸脱にあったという事です。今日はそれに関してもう少し踏み込んで書いてみます。

過去も「日本的経営とは何か」というテーマで論考したり、参考図書の紹介をしてきましたが、先日小室直樹さんの「日本資本主義崩壊の論理」を読みました。この本は1992年の刊行で、いま読み返してみるとちょっと時代錯誤な点はあるのですが、改めて日本的経営に関して考える良い機会となりました。

小室さんのこの著作は山本七平さんの「日本資本主義の精神」を解説した一種の解説書です。しかし、その解説に若干違和感があり、改めて山本さんの原著の方をざっと読み返してみました。改めてその要所を読んでみて「日本資本主義の精神」が大変な名著で、2012年の今、このタイミングでこそ大きな学びがあると感じました。

そんな折、おそらくアマゾンでの検索のせいでしょうが、アマゾンがお奨め商品で「滴(しずく)みちる刻(とき)きたれば」という松下幸之助さんの伝記本全4巻を紹介してきました。副題に「松下幸之助と日本資本主義の精神」とあります。早速購入して見ました。 いつものようにまだ全部読んでおらずところどころ飛ばし読みしただけですが、アマゾンは良い本を紹介してくれました。

バブル崩壊以降、ミルトンフリードマンの新自由主義がもてはやされ、自由な市場と競争を重視する欧米的経営を金科玉条とする風潮が蔓延、年功序列や終身雇用をやり玉に挙げて日本的経営を旧守と貶める事が当たり前になっていきました。 そして結果、世界は行き詰りました。 アメリカの「ウォール街を占拠せよ」運動の背景にある極端な格差社会の出現は、多かれ少なかれすべての先進国、新興国においても共通する現象です。欧米型の資本主義の行き詰まりは明らかなのです。

「滴みちる刻きたれば」の中で著者の福田和也さんは、欧米型の利益追求型の新自由主義的合理性に対してこれを否定せず、それはそれとして間違っていないが、これと対極にある松下幸之助の経営理念や経営行動からも「学ぶべき点があるのではないか」という筆遣いをされています。 この本が書かれたのは2001年から2005年にかけて、サブプライム問題、それ以降の大混乱以前なのでそのような論調になったのでしょう。

しかし、今現在、このタイミングでは「行き詰った欧米型資本主義に変わる新しい世界システムへの解として日本資本主義があり、その理想形が松下幸之助の経営にあった」と主張するのが正しいと思えます。 松下電器を再生させたのは中村邦夫さんである、と言われています。検索したら「社名をパナソニックに変え、松下幸之助神話を壊した男」であるという記述がありました。

中村さんは2000年に社長に就任し、聖域なき松下電器の構造改革を断行し、松下電器を再生させたそうです。いわば中興の祖です。しかしこの再生、中興は永続きしませんでした。 正直なところ詳しい事は知りませんが、私は日産のゴーンさんにしろ、中村さんにしろ、本当に「世に言われているような名経営者なのか?」と大いに疑念があります。

それは何故か、経営とは難しいものですが、単純でもあります。 利益を上げるという事においては「経営資源を儲かっている事業に集中させ儲かっていない事業は売り飛ばし、余剰な人員はリストラする、更にサプライヤーに否応ないコストダウンを要求する。」事が一番当たり前の手で判り易い打ち方です。その意味では安易です。 これは大抵の事業再生の処方箋でしょう。ただしこれは応急措置で、根本策かどうか、結果企業が永続するかどうかとは別問題です。

根本策か、永続性のある策かを問う上で、問題となるのは一連の意思決定と経営行動に、無から価値を生み出すような創造性があるのかと言う点のように思えます。 経営とは詰まる所、創造でないでしょうか。創造をやめるところに停滞が始まります。 ソニーやホンダ、また松下電器にはこの創造がありました。そしてそれを近年まで維持してきたことに繁栄の基盤があったのです。

繰り返しになりますが、経営とは常に創造性こそが最も重要なテーマで、これをないがしろにするところ永続的な繁栄はありません。 不勉強ですのでゴーンさんや中村さんに創造性が皆無とは言い切れませんが、少なくとも選択と集中、更にリストラ、コストカットに創造性は必要ありません。 その断行に必要な資質をあえて挙げれば「無慈悲、かつ利己的な思いきり」でしょう。 こんなことを書くと暴論と言われそうですが、その誹りを避ける為に幸之助さんのエピソードを紹介したいと思います。

大正7年の創業以来好業績を続けていた松下電器ですが、昭和初期の世界恐慌、株の大暴落で昭和4年末遂に売り上げ急減(半分に)、在庫過多、そして倒産の危機を迎えます。 おりしも病床にあった幸之助さんの元に幹部の井草歳男らが集まり、幸之助さんの枕頭で「売り上げが半分になるという業績の急激な悪化への対応として、生産を半減し、従業員も半減する、と言う方針を説明しました。 これに対して病床の幸之助さんは、このように述べられたと言います。

「生産は即日半減する。しかし従業員は一人も解雇してはならぬ。工場は半日勤務とする。従業員への日給は全額支払う。その代わり店員は休日を廃してストック品の販売に努力する。かくして持久戦を続け、状況の推移を見よう。さすれば資金の行き詰まりもきたさずに維持が出来る。半日分の工賃の損失は長い目で見れば一時的損失で問題は無い。将来益々拡張せんと考えているときに、一時とは言え折角採用した従業員を解雇することは、経営信念の上に自ら動揺を来すことになる」

このエピソードはあまりにも高名ですが、この方針を聞いた従業員は奮起し、団結して販売に奮闘し、翌2月には在庫を一掃し、春には生産体制も元に戻すことが出来たと言います。 これこそが、苦境に陥った時の正しい対処法の見本に思えます。これは松下だけの固有の例ではありません。

また幸之助さんは事業経営に成功するための条件として以下の3点を上げています。 ① 発展性のある職種を選ぶ ② 運命 運がないとダメ ③ 経営の才能 才能とは言い換えると使命感 私が特に注目するのは③の使命感です。 この伝記の著者の福田さんは幸之助さんが使命感に目覚めるきっかけとして天理教本部の訪問のエピソードを上げられています。

この天理教訪問を契機に松下幸之助さんにとって経営は「聖なる事業」となったと言います。 その時に感慨と感激を幸之助さん自身がこう述べています。 「きょう目のあたりに見たあの盛大ぶり、盛大と言えば実に盛大だ。繁栄と言えば実に繁栄だ。山なす献木(建築用木材の供物)、教祖殿建設の信者の喜びに満ちた奉仕ぶり、塵一つない本殿の清掃ぶり、会う人ごとの敬虔な態度・・(中略)・・一糸乱れざるその経営、経営と言えば当てはまらないかもしれないが、信仰に目覚めぬ自分にとっては一つの経営と考える事もやむを得ない事でないか。立派な経営、すぐれた経営とは何か、そこでは多くの人が喜びに満ちて活躍している。真剣に努力している。実に優れた経営だと、感嘆を大きく、深くするほど、真個の経営という事がしきりと頭に浮かんでくる。」

更に、 「家に帰ってもなお考えが尽きない。夜、深更に及んで更に深く考えさせられた。そして両者を比較してみた。某教(天理教)に事業は多数の悩める人を導き、安心を与え、人生を幸福ならしめる事を主眼として全力を尽くしている聖なる事業である。我々の業界もまた人間生活の維持向上のうえに必要な物資の生産を為し、必要欠くべからざるこれもまた聖なる事業である。我々の仕事は無より有を出し、貧を除き富をつくる現実の仕事である。貧を失くすことは、人生至高の尊き聖業であると言い得る。・・(中略)・・人間生活は精神的安定と、物質的豊かさによってその幸福が維持され向上が続けられるのである。その一つを欠いてもならない。我々の事業も、某教の経営も同等に聖なる事業であり、同等になくてはならぬ経営である」

この「聖なる事業」というコンセプトは日本型経営、日本資本主義を考える上での重要なキーワードです。そしてこれは前述の創造性とも深い関わりがあります。 事業経営を堅固にそして永続性のあるものとするそのキーワードは「聖なる事業」であることを自己定義することです。故にそこに使命感が生まれます。

皆さんよくご存じでしょうが、ドラッカーが紹介した3人のレンガ職人のエピソードを紹介して本稿を閉めたいと思います。 炎天下にレンガを積んでいる三人のレンガ積みのそばを、旅人が通りかかりました。 旅人は、それぞれ三人のレンガ積みに「あなたは何をしているのですか?」と声をかけました。旅人の問いに対する答えは三者三様でした。

一人目のレンガ職人は「見れば分かるだろう・・・。私は親方の命令でレンガを積んでいるんだ。辛い仕事だよ。」と答えました。 二人目のレンガ職人は「私はレンガを積んで塀を造っているんだ。辛いけれど、家族と生活のためなんだ。」と答えました。 三人目のレンガ職人は「私はレンガを積んで多くの人が救われる立派な教会を造っているんだ。やりがいのある仕事だよ」と答えました。

一人目の職人は、命令でただ働く職工です。二人目の職人は家族のために働くという目的は持っていますが、辛い仕事と言う職業観からは逃れていません。 三人目の職人は、多くの人が救われる教会を造るという目的を意識してレンガを積んでいる職人です。そこには辛い仕事という職業観はありません。

ドラッカーはこの三者三様のそれぞれの答え方の中に仕事の意義をどのように考えるかによって、仕事への取り組み姿勢が変わり、結果としてその成果も大きく違ってくる事を表現しました。仕事の意義をしっかりつかんで働く人は、他者から「やらされている」という発想から解放され、イキイキとした創造性のある働き方が出来ます。人生の目的が変われば人生の質が変わるのです。 この目的意識が創造性と深い関係にある事は言うまでもありません。

本稿がこれからの経営を考える上で皆さんの参考になれば幸いです。